第209章 私のことが好き?

近籐正明は来た人を見ると、眼鏡をかけた若い男性だった。

「LINEを交換してもいいですか?」若い男性は恥ずかしそうにスマートフォンを差し出したが、近籐正明にはたき落とされた。

横を見ると、横山紫はすでにその黒い車で去っており、影も形もなかった。

近籐正明の表情は一気に崩れた。

眼鏡の男性がスマートフォンを拾い上げた瞬間、目の前の美女から「消えろ」と怒鳴られた。

澄んだ声は、心地よいバリトンだった……

「あ、あなた……」

眼鏡の男性は大きなショックを受け、口を大きく開けたままだった。

なんてこった、この「美女」は男の娘だったのか!

近籐正明は目の前の男性が動揺しているのを見て、深いため息をつき、青ざめた顔で立ち去った。

高橋グループ本社ビル、社長室。

高橋進は目の前の書類の束を見ながら、頭痛に悩まされ額を押さえていた。