第186章 全てを知っていた

真実を話すと、高木朝子はすべての防備を解き、顎を少し上げて、軽く笑いながら言った。「あの人はもともと長くは生きられなかったのよ。私は彼女を早く解放してあげただけ。正博兄さんと離婚の話をするたびに、あの老人を言い訳にして、ショックに耐えられないとか何とか...ふん、ショックに耐えられないなら早く死んだ方がいい。早く死んで成仏した方がいいでしょう?」

「彼女は病院に入院していて、毎日何千円も何万円もかかっていた。それは全部正博兄さんのお金よ。池村琴子が正博兄さんのお金を使うのはまだいいけど、厄介者まで連れてきて。末期がんはとても苦しいって聞くし、私が解放してあげたのは、むしろ良いことをしたのよ!」

高木朝子が一言一句話し終えると、空気が凍りついた。

別の部屋にいた池村琴子は、すべてを聞き取っていた。

なんと、高木朝子が祖母を殺害したのは、山本正博が離婚を拒否したからだった。

なんという解放、なんという成仏!

最後に見た祖母の姿を思い出すと、琴子の心は痛く締め付けられ、鼻が詰まる思いだった。

祖母の命は長くはなかったかもしれない。でも、たとえ最後の一日だけでも、祖母の側で自然な死を看取りたかった。高木朝子に命を断ち切られるのではなく。

高橋敬一は彼女が苦しそうなのを見て、顔に少しの同情を浮かべた。

「後藤先生、私も間違いは分かっています。でも、もう起きてしまったことですし...勝訴の見込みはありますか?」高木朝子は言い終わると、おずおずと後藤英夫を見つめ、安心させてくれる言葉を待った。

後藤英夫はグラスを置き、淡々とした目で彼女を見つめ、長い間黙っていた。

彼の様子を見て、高木朝子の心は再び不安になった。

「後藤先生、私はあなたを信頼して本当のことを話したんです。後悔されたんじゃないですよね?」そう考えると、高木朝子はすぐに立ち上がり、両手を不安そうに組み合わせた。「後藤先生がとても優秀だということは知っています。正博兄さんもあなたが私のために見つけてくれた弁護士だと言っていました。私は無条件であなたを信頼したからこそ、こんなにたくさんのことを話したんです。もしあなたが私を助けてくれないなら...」

高木朝子の言葉は緊張に満ちていて、後藤英夫の無表情な様子を見ると、心臓が激しく鼓動した。