第203章 結果のない運命

高橋謙一はカードを指で挟み、何度も見返しながら、不遜な唇の端に悪意のある笑みを浮かべた。「確か、もう二度と高橋家のお金は使わないって言ってたよね？」

轟音が耳元で鳴り響き、彼女の頭の中を揺るがした。数秒後、高橋姉帰の顔に恥辱と屈辱、そして憎しみが浮かび上がった。

高橋謙一は意地悪く笑い、そして彼女の目の高さまでしゃがみ込んだ。桃の花のような目を細め、狐のように笑った。

「高橋姉帰、南條夜のことは、諦めた方がいいよ」

全身を寒気が走り、高橋姉帰の頬は真っ赤に染まり、唇は震えていた。「どうして？」

「彼はお前の未来の義兄になるからだ」

山本正博が死んで、南條夜は明らかに妹の夫の最適な候補となっていた。

「でも姉さんは全然彼のことが好きじゃないじゃない！」

「好きになるさ」高橋謙一はカードを弄びながら、傲慢な笑みを浮かべた。「時間はたっぷりある。いずれ心を動かされる。それまでは、邪魔な人間に二人の仲を掻き回してほしくないんだ」

高橋姉帰は目を見開き、顔色は蒼白になり、歯で下唇を強く噛んだ。濃い血の味が彼女の心の痛みを一層強めた。

邪魔、横恋慕……

なぜ追求する機会すら与えられずに死刑宣告されなければならないの？！

不甘と怒りが彼女を激しく蝕んでいった。

「私には好きな人を追いかける権利もないっていうの？！」高橋姉帰は怒りで体を震わせた。

「南條夜はお前のことなんか好きじゃない。お前が押しかけていけば、恥をかくのは我々だ」高橋謙一は冷笑し、無造作にカードを彼女に投げ渡した。「ここまでにしておこう。後で壁にぶつかって、人のせいにするなよ」

高橋姉帰が南條夜を好きな件は結果が見えていた。このまま引きずれば、彼女は妹への憎しみを募らせるだけだろう。

その日が来るくらいなら、今のうちに断ち切った方がいい。

高橋姉帰は呆然と車椅子に座ったまま、高橋謙一がいつ去ったのかも分からなかった。

池村琴子は別荘に座ったまま、どこにも行かなかった。彼女は待っていた。警察からの電話を。

しかし警察からの電話は来ず、代わりに山本正博の秘書からの電話が来た。

「池村さん、10時の本社役員会議にご出席ください」

池村琴子は固まった。

山本グループの取締役会議が、自分と何の関係があるというの？