第299章 対決

竹内雅子と高橋進は顔面蒼白になり、特に高橋進は即座に立ち上がってドアの方へ駆け寄った。

高橋進はドアを必死に押さえつけ、心臓が激しく鼓動していた。

羽が下りてまだ間もないことを思うと、高橋進は一瞬にして顔が引きつった。

もしかして羽が早めに戻ってきたのか？

深く息を吸い、恐怖に満ちた声で尋ねた。「誰ですか？」

心臓が止まりそうになった瞬間、ドアの外から声が聞こえた。「高橋さん、愛さんがフロントに荷物を置いていかれたので、先にお持ちしました。」

「ああ...」高橋進の心臓が徐々に元の位置に戻っていく。「ドアの外に置いておいてください。」

ドアの外の物音が疎らになり、しばらくして静寂が戻った。

高橋進の蒼白な顔色が徐々に戻っていった。

羽でなくて良かった...

彼はトイレのドアの方を見やり、複雑な心境だった。

彼と竹内雅子は何もしていないのに、今や一歩一歩、不倫でもないのに不倫に追い込まれていた。

「雅子、君...」

竹内雅子を呼び出そうとした瞬間、再びドアの鍵の音が聞こえた。

高橋進の言葉は喉に詰まり、振り返ると、鈴木羽がちょうどドアを開けたところだった。

鈴木羽は大小の買い物袋を手に持ち、高橋進の恐怖に満ちた表情を見て驚いた。

「どうしたの？」鈴木羽は一瞬戸惑い、手の荷物を見せながら、「このスイートルームにキッチン用品があるから、今まで他の人が料理してたけど、今回は私が自分で作ってみようと思って。」

以前病気になる前は、家族のために料理をするのが大好きだった。その後、妊娠出産で台所に立つ機会もなくなったが、このスイートルームでキッチン用品を見つけて、急に意欲が湧いてきた。

高橋進の心臓は喉まで飛び上がりそうになった。洗面所の方をちらりと見て、竹内雅子が出てこないのを確認すると、笑みを浮かべた。「それはちょうどいい。君の料理を食べて、若かった頃を懐かしみたいな。」

その言葉を聞いて、鈴木羽の手が一瞬止まったが、すぐに取り繕った。

彼女は荷物を彼に渡しながら言った。「手を洗ってくるわ。」

「待って！」高橋進の声が数段高くなった。

鈴木羽は首を傾げた。「どうしたの？」

高橋進は気まずそうに笑い、彼女の手を引いてスイートルームのキッチンへ向かった。「キッチンで洗おう。ちょうど私も手伝えるから。」