第315章 一緒に行こう

男は軽く「うん」と声を出し、温かい舌が彼女の口の中に大胆に侵入し、貪欲に暫く留まってから、ようやく彼女を放した。

二人はしばらく抱き合っていたが、池村琴子は彼を軽く押しのけ、頬を赤らめた。

「あの松田柔子とあなたは一体どういう関係なの?」松田柔子のバックグラウンドは、やはり彼女を警戒させた。

「祖父が私と彼女を一緒にさせたがっているんだ」山本正博の深い瞳には感情の欠片も見えなかった。「祖父以外は誰も考えていない。」

池村琴子は黙った。

木村爺さんの性格は確かに厄介だった。彼女は山本正博を見つめ、言いかけて止めた。

「あなたとお父さんの関係は良好なの?」

「どの父親のこと?」

「木村利男さん。」

「良くない。」山本正博の目には嘲りの色が浮かんだ。

この男とは数回しか会ったことがなく、会うたびに自分の思い通りに生きろと言われた。木村利男が最後に自分に言った言葉を覚えている:「なぜ私が弟を作ったか分かるか?お前が言うことを聞かないと分かっていたからだ。」

皮肉なことに、彼は本当に言うことを聞く馬鹿な弟、木村誠治を作った。

山本正博の目に冷たさが宿るのを見て、池村琴子は言葉を濁した:「実は、世の中の親で子供の幸せを願わない人はほとんどいないわ。あなたのお父さんも…」

「じゃあ、高橋進はどうだ?」

池村琴子の呼吸が止まり、言おうとした言葉が喉に詰まった。

「高橋進のような人は…珍しいわね。」

以前は分からなかった。なぜ高橋進はあの偽物の仙に優しく接し、自分にはこんなに冷たいのか。後になって理解した。多くの人にとって、面子が最も重要なのだと。

もし彼女に優しくすれば、高橋進は自分の顔に泥を塗ることになる。だから、彼は占いを信じる方を選んだ。そうすれば自分を納得させる理由になるから。

「思いやりのある親を持つことは、私にとって贅沢なことだ。」山本正博の言葉には淡い悲しみが滲んでいた。

……

木村家の会議室で、山本正博が池村琴子を連れて去った後、高橋家の一行も帰ろうとしていた。

木村爺さんは高橋家の人々が去っていくのを見て、表情を曇らせた。

この人たちは鈴木家とは違う。高橋家の財力は鈴木家よりもはるかに大きい。高橋家の人々を敵に回すことは木村家にとって得策ではない。