第356章 彼の怒り

彼女が約束を破ったのは、南條夜に輸血をするためだったの?

南條夜がそんなに大切なの?妊婦の彼女がリスクを冒すほどの価値があるの?

山本正博は唇を固く結び、心臓が刃物で切り裂かれるような痛みを感じ、息をするのも辛かった。

彼は目を伏せ、目の中の狼狽を隠しながら、かすれた声で尋ねた。「彼女の体調はどうだ?」

「今のところ不明ですが、危険はないと思われます」

危険があれば、とっくに救急室に運ばれているはずだ。

高橋仙が妊娠中にも関わらず、他の男性に輸血するなんて大胆なことをするとは。執事がこの情報を知った時も、かなり驚いていた。

南條夜は彼女と噂のある男性だというのに、命の危険を冒してまで輸血をするなんて、考えただけでも...

執事は若旦那の表情は見えなかったが、頭の中では既に若旦那に緑の帽子を被せていた。