第355章 救うか救わないか

「RHマイナス血液型なの?」南條夜の母は興奮して立ち上がった。「夜に輸血してくれるなら、その後の療養費は心配しないで。私が全部責任を持つわ。もし良ければ、私が直接看病させていただきます。これからはあなたの子供も私の子供よ。夜を助けてくれるなら、何でもするわ...おばさんからお願い、お願いだから助けて、おばさんからのお願いだと思って...」

南條夜の母の取り留めのない言葉を聞きながら、池村琴子は黙っていた。

直接看病か...

それなら彼女は短命になるだろう。

「先生、まずは試してみましょう」池村琴子は医師を見上げた。「何かあっても病院には迷惑をかけません」

この保証を得て、医師はようやく安堵の表情を見せた。

仕方がない、最近は医療トラブルも多いし、こんな危険な状況で、もし妊婦の家族が問題を起こしたら、病院に迷惑がかかる。

「あなたが子供の父親ですね?」医師は近籐正明を見て、低い声で言った。「ご家族で話し合って、何かあっても病院に迷惑をかけないということであれば、こちらで対応させていただきます」

どちらにしても命は命、貴賤の別はない。

病床の患者と比べれば、妊婦の採血が必ずしも大きな問題を引き起こすわけではない。

救命なら最も緊急を要する方を優先すべきだ。

近籐正明は非常に不愉快な表情を浮かべ、否定しようとしたが、池村琴子に見つめられ、首を横に振った。

近籐正明は歯を食いしばり、南條夜を一瞥すると、顔色が青くなったり白くなったりした。

彼はサングラスをかけていたので、他人には彼の目つきは見えなかったが、顔に浮かぶ不満は明らかだった。

彼女は今妊娠しているのに、なぜ他人のために採血しなければならないのか?

しかし、この人が池村琴子だと思うと、それも道理にかなっていた。

輸血は一対一の交換ではないが、人命を救う可能性がある。もし今病床に横たわっているのが南條夜ではなく、ただの一般人だったとしても、池村琴子は同じ選択をしただろう。

近籐正明は彼女が組織のリーダーになった時のことを思い出した。誰も反対できなかった。なぜなら、組織のほぼ全員が彼女に恩義があったからだ。