第371章 くそっ、また彼女にやられた

「彼女だよね?」高橋進は少し興奮していた。

高橋姉帰は黙ったまま、目を伏せて複雑な表情を隠し、指を強く握りしめた。嫉妬が彼女を飲み込もうとしていた。

彼女と高橋仙の最大の違いは、この「W」組織だった。

もし彼女がこの組織のメンバーだったら、こんなに受け身にはならなかっただろう。

彼女にはずっと理解できなかった。なぜバックグラウンドもない、ゴミ拾いのおばあさんに育てられた人が、このような背景を持っているのか。

もしかして、彼女は迷子になったのではなく、誰かに連れ去られて特別な訓練を受けたのではないか?

高橋姉帰は考えても答えが出なかった。

舞台上の一挙手一投足に気品が漂う女性を見ながら、高橋姉帰の胸には大きな石が乗っているかのように、重苦しく息苦しかった。

高橋仙がいなければ、今でも彼女は高橋家の四女として、三人の兄に可愛がられ、光町市のお嬢様たちに取り入られていただろう。

今のように、家にも帰れず、高橋進にお金を無心するような状況にはならなかったはずだ。

母親が弟の手続き費用について泣きながら訴えてきたことを思い出し、高橋姉帰はいらだちを覚えた。

「姉帰、仙は優勝できないよね?」何かを思いついたように、高橋進の目が急に輝いた。

これは国際大会だ。もし高橋仙が優勝すれば、それは単なる家名を上げるだけではなく、高橋家全体の地位も一段階上がることになる。

今では高橋家と言えば光町の長者、成金、金持ちというイメージだが、本当の上流階級は、お金だけでなく名声も重視する。

そのため、お金持ちの家でも、国際大会で優勝した人との縁組みを求めることがある。それによって家族全体の地位を上げ、後継者の血統に価値のあるものを注入できるからだ。

もし高橋仙が優勝したら……

高橋進は急に誇らしげな表情を浮かべた。

高橋姉帰はそれを見て、表面的には軽蔑しながらも、心の中の言葉を抑えきれずに口に出してしまった。「何が得意げよ、まだ入賞できるかどうかもわからないのに!」

これは国際大会だ。全国優勝したところで意味はない、国際的な賞を取らなければならない。

日本では、優勝だけが意味を持つ。他は、誰も覚えていない。

高橋姉帰のこの皮肉な言葉に、高橋進は耳障りに感じ、思わず眉をひそめた。

隣の葉子はこの言葉をしっかりと聞いていた。