この結果を考えると、松田柔子は怒りで煮えくり返った。
なんて高橋仙だ、わざとここで罠を仕掛けたのね!
この時の彼女も言いたいことが言えなかった。結局、誰も彼女に高橋仙のパソコンにハッカーを侵入させろとは言っていない。これは私的な行為で、自業自得としか言えなかった。
「この高橋仙、なかなかやるな」木村爺さんは目を細め、意味深な口調で呟いた。
このコンテストは国家レベルではないものの、民間のコンテストとしては十分な規模で、異なる国の間でも勝負への執着心があった。
高橋仙は今回、まさに輝かしい活躍を見せた。
彼女の現在の立場も相まって、高橋家と鈴木家への好影響は明らかだった。
「高橋グループと鈴木グループの株価が上がっている」
木村爺さんは携帯を開き、この二社の株価が急上昇しているのを一目で確認した。
コンテストはライブ配信されており、内部の情報が外に漏れ、市場はすでに反応していた。
松田柔子は顔を青ざめさせ、歯ぎしりするほど腹が立った。
池村琴子は一人の力で二社の株価を上げただけでなく、これからは高橋家と鈴木家の地位も更に上がるだろう。
以前は皆、池村琴子は運だけだと思っていた。
この池村琴子がどういうわけか「W」組織に入れたのも、皆は山本正博が自分の愛妻を押し上げるために手を回したのだろうと推測していた。
また、これは高橋家が四女のために仕組んだ宣伝だと推測する人もいた。高橋家の名誉と威信を高めるためだと。
どちらにせよ、皆は池村琴子の実力を疑問視していた。
しかし今日以降、池村琴子の「実力」は認められることになるだろう。
これからは、もう誰も彼女を見た目だけの器と言うことはできない。
そう考えると、松田柔子の胸は重く沈んだ。
以前の彼女も池村琴子は器だけだと思っていた。せいぜい家が金持ちで、自分より少し綺麗いというくらいだと。
それ以外に、池村琴子には彼女に勝る点はないと思っていた。
しかし今日のコンテストで完全に目が覚めた。
池村琴子は、ただの器ではない。そして、彼女には及ばない存在だった。
よく考えてみれば分かることだった。木村勝一がどうして器だけの女を好きになるだろうか?
松田柔子は唇を噛みしめ、木村爺さんの悟ったような表情を見て、心の中の危機感が徐々に強まっていった。