第368章 今なら降参する間に合うか

彼女は木村爺さんが言ったことを思い出した。

彼女は「W」組織の人々と連絡が取れないが、高橋仙が彼らとの唯一の架け橋となった。

組織内の人々についてもっと知りたければ、高橋仙に聞くしかない。面子を捨ててでも聞かなければならない。

「木村爺さん、あなたが得た情報では、「W」組織から派遣された選手は高橋仙なのですか？」松田柔子は信じられず、直接木村爺さんに尋ねた。

木村爺さんも彼女たちの先ほどの会話を聞いており、老いた顔は非常に深刻な表情を浮かべていた。

「おそらく違うだろう。」

そう言いながらも、木村爺さんは彼女たちと同じ考えを持っていた。この高橋仙は、絶対に順位を取らせてはいけない。

……

山本正博が池村琴子が会場に入るのを見送った後、傍らのボディーガードが彼の耳元で小声で何か言った。

これらのボディーガードは彼が特別に雇って池村琴子を守るために配置した者たちで、何人かはすでに潜入していた。

彼女が「W」組織のメンバーで、組織を代表して参加することを知っていても、何か予期せぬことが起きないとは限らないと心配していた。

「山本さん、木村爺さんたちは私たちのすぐ近くにいます。横山紫と松田柔子もいます。」

山本正博の瞳の色が深くなり、表情は冷淡だった：「何か情報があったら、すぐに私に知らせろ。」

横山紫と松田柔子が一緒にいるのは、絶対に良いことではない。

「彼女たちを監視しろ。もし試合を妨害しようとしたら、証拠を残せ。」

「はい。」

……

参加選手が入場するにつれて、観客も続々と入場していた。

葉子は鈴木鈴と加藤愛子が高橋家と鈴木家の人々と一緒に入っていくのを見て、急いで彼女たちを追いかけた。

チケットチェックが終わった後、葉子は最後列に座ったが、鈴木鈴と加藤愛子が前の列に向かって歩いていくのを見るしかなかった。

葉子は我慢できず、すぐに立ち上がった。

「鈴木鈴！」葉子は追いかけていったが、その時鈴木鈴と加藤愛子はすでに2列目に座っていた。

葉子は足を止め、まるで地面に張り付いたようだった。

彼女は信じられなかった。鈴木鈴と加藤愛子が前列の、それも2列目のチケットを持っているなんて。

そのとき、鈴木鈴も葉子に気付き、少し顔を横に向けて、葉子に手を振った。

挑発！これは完全な挑発だ！

葉子は嫉妬で目が赤くなった。