他の参加者たち「……」
「皆さんが諦めてしまうと、私の勝利に価値がなくなってしまいます」池村琴子は茶目っ気たっぷりに唇を上げ、物憂げな口調で言ったが、それが人の心をくすぐった。
「W」組織の人間は、みんなこんなに自信に満ちているのか?
「私に勝てるとは限らない」という言葉を聞いて、参加者たちは勝負心に火がついた。
彼らは元々優勝を目指してきたのだ。それぞれが企業や自分の街の代表として、優勝して国の名誉を高めたいと思っていた。
大局的に見れば、国益を重視し、「W」組織の実力者に国際選手と戦わせた方が勝利の確率は高いだろう。
しかし彼らは、自分たちもかつて夢を抱いてここに来たことを忘れていた。
このように退くのは、あまりにも臆病すぎる。
「あの、お名前は?」小柄な女の子の一人が好奇心いっぱいの表情で尋ねた。
池村琴子は優しく答えた。「池村です」
今では多くの人が彼女を高橋仙と呼んでいたが、彼女は一度もその名前を認めたことはなかった。
池村は、彼女の骨の髄まで刻まれた姓。琴子は、祖母がつけてくれた名前で、一生涯共にあるもの。死んで墓石に刻まれる時も、この名前しか使わないだろう。
「池村さん、あなたの組織には実力者が多いと聞きましたが、きっとデザインの才能もすごいんでしょうね?」小柄な女の子は目を輝かせて、まるで競技者というより熱狂的なファンのようだった。
池村琴子は思わず笑みを漏らした。
「そんなに凄くないわ。組織の中では平均的な方よ」
結局、彼女はデザインだけを担当していて、制作と運営は全て近籐正明が行っているのだから。
近籐正明がいなければ、彼女も安心してデザインに専念し、この分野で活躍することはできなかっただろう。
彼女が凄いというより、仲間たちが凄いのだ。
この小さな出来事は、時間の経過とともにすぐに過ぎ去った。
競技は一度きりのチャンス。採点によって日本チャンピオンを選出し、その後国際選手と対戦して世界チャンピオンを決める。
これまでこの種の大会では、高級ブランドの代表者が審査員を務め、チャンピオンは高級ブランド企業からスカウトされるのが常だった。
競技場の裏手の片隅に、一人の男性と一人の女性が立っていた。
女性は白いドレスを着て、サングラスをかけ、手に二枚の紙を持っていた。