池村琴子の言葉を聞いて、小林悦子は心が温かくなった。
彼女は高橋忠一の妹に好感を持っていた。それは自分を助けてくれたからだけでなく、高橋仙の背景を知った後、高橋仙という人物に敬意と尊敬の念を抱いたからだった。
自分に問いかけてみると、もし自分が高橋仙の立場だったら、彼女のように祖母の仇を討ち、さらに「W」組織に入るなんてことは絶対にできないだろうと思った。
「高橋さん、この前はお礼を言う機会がなくて……」小林悦子が入ってきて、鈴木愛の顔を見た時、言葉を詰まらせた。
車の中での艶めかしい場面を思い出し、小林悦子は首筋まで真っ赤になった。
鈴木愛は小林悦子に無理に微笑みかけ、池村琴子の方を向いた。「仙従妹、体を大切にしてね。私のことは心配しないで。彼が警察に入ったからには、そう簡単には出てこられないようにするわ。」
ここまで言って、鈴木愛自身も自信がなかった。
彼女はいつも柔和な性格で、警察も証拠不十分と言っている。強姦罪は強力な証拠が必要で、そうでなければ木村誠治の力で中の人間を買収されたら、すぐに釈放されてしまうかもしれない。
そう考えると、鈴木愛の心は大きな石で押しつぶされるようだった。
証拠、どこで証拠を見つければいいのか。録画さえ証拠として認められないなら、何が証拠になるというのか。
鈴木愛は絶望的になった。
窓の外の景色を見つめ、ぼんやりと考え込んでいた。
彼女のその様子を見て、池村琴子は胸に不吉な予感を感じた。
鈴木愛との付き合いは長くないが、彼女の性格は多少理解している。何か考え詰めて、馬鹿なことをしでかすかもしれない。
この時、小林悦子は鈴木愛の話の内容は分からなかったが、彼女の気分が良くないことは分かった。
「警察」という言葉を聞いて、小林悦子はまぶたがピクリと動いた。
突然、彼女は思わず尋ねた。「失礼ですが、愛さんには彼氏がいらっしゃいますか?」
鈴木愛は上の空で、彼女の質問を聞いていないようだった。
池村琴子が答えた。「いいえ、従姉はまだ独身よ。」
独身?じゃああの人は……
小林悦子は目を丸くして、呆然とした表情を浮かべた。
「どうしたの?」池村琴子は彼女が幽霊でも見たような様子なので、思わず尋ねた。「小林さん、何か言いたいことがありますか?」
小林悦子は身震いし、突然車の中での場面を思い出した。