第411章 天から降ってきた幸運

「高木朝子。」

上田従雲は助手の助けを借りてようやく体を安定させた。

自分の愛する人が誰かに害されたと聞いて、上田従雲は突然力が湧いてきた。

憎しみと愛は、人を奮い立たせることができる。

池村琴子は唇を噛み締め、かつての自分を見ているようだった。

この老人が突然生きる意欲を失うのを見たくなかった。

上田従雲は彼女を妨害したが、祖母の面子を考えて、この老人までも何か起こるのを見たくなかった。

「池村さん。」上田従雲はメイドが持ってきた水を飲み、体を支えながら、優しい目に謝意を込めて言った。「大会のことは、申し訳ありませんでした。私の過ちを償うため、補欠として参加する機会を差し上げたいと思います。」

国際大会では必ず補欠選手がいる。各国は自国の名誉と評判のために、一組の参加者だけでなく、補欠でも一つの栄誉として準備している。

池村琴子は予感していた。上田従雲は補欠として参加させると言っているが、きっと何とかして彼女を本戦に出場させようとするだろう。

もしそうなら、それは彼女の本来の意図とは相反することになる。

「ありがとうございます、上田先生。私は決勝に進めなかったので、補欠の資格はありません。上田先生のご好意は心に留めておきますが、ルールはルールです。個人の意思で変更することはできません。」

個人の意思で変更できないという彼女の言葉を聞いて、上田従雲の目の中の罪悪感はさらに深まった。

この大会は一見正当に見えるが、彼の個人的な意思で多くのことを変えることができた。

もし池村琴子が補欠を受け入れれば、彼は何とかして彼女を本当の決勝に出場させようとしただろう。

しかし彼女の言う通りだ。大会にはルールが必要で、そうでなければ大会の意味が失われてしまう。

若い頃の彼にはそういう気概があったが、この年になって、物事を達観するようになってから、むしろいわゆるルールを尊重しなくなっていた。

「申し訳ありません。」

上田従雲は分かっていた。今何を言っても取り返しがつかない。この娘は、彼が想像していた以上に気骨のある人だった。

もし彼が引き続き大会のことで彼女に特別待遇を与えようとすれば、かえって彼女を侮辱することになる。