第428章 誰が六郎を好きにならないのか

彼女は近籐正明のことを彼より大切に思っていた。

恋愛と家族愛のどちらかを選べと言われたら、迷わず後者を選ぶだろう。

「近籐正明のことが好きなの?」

「好きよ」池村琴子は迷わず頷いた。六郎は彼女の親友であり、家族同然だった。

組織で苦労していた時、六郎は命を賭けて彼女のために道を切り開いてくれた。

山本正博の全身から漂う低気圧を感じ取り、池村琴子は目を見開いて、言葉を濁した。「彼はトップスターだから、好きにならない人はいないでしょう」

「君は芸能人に興味がないと思っていたけど」山本正博は彼女を軽く見やり、胸の中に湧き上がる感情を無視して言った。「『ボス』から招待を受けた」

池村琴子は固まった。

六郎が山本正博を招待したの?

山本正博は今、組織との関係が微妙なのに、六郎が彼を招待するのはどういう意味?