第430章 あなたに真心を捧げる

東京インターナショナルホテルの廊下には、細長いカーペットが敷き詰められ、豪華で柔らかい。

壁には古典的な名画が掛けられ、贅沢さを醸し出している。

ホテル全体が貸し切られ、多くの芸能人が入っているため、各部屋の前には警備員が立ち、緊張した雰囲気に包まれていた。

池村琴子は廊下に立ち、ようやく山本正博を待ち受けることができた。

池村琴子は彼をじっと見つめて尋ねた。「近籐正明とどんな話をしたの?」

六郎は彼女に何も隠さないタイプだったが、大物オーナーとして山本正博を招待して以来、様子がおかしくなってきた。

彼女は六郎の忠誠心を疑ったことは一度もなかった。

山本正博は彼女の心配そうな様子を見て、瞳の光が暗くなった。「ずっとここにいたのか?」

彼女がこれほど近籐正明のことを心配しているとは。

「山本正博、あなたと山崎三郎がどんな取引をしているかは知らないけど、近籐正明を傷つけるなら、私だって黙ってはいないわ。」

彼女の言葉には強い意志が込められていた。

山本正博は彼女を深く見つめた。「安心して、君の友人は傷つけない。」

池村琴子は眉をひそめた。「本当?」

山本正博は目を伏せ、心の動揺を隠した。「ああ。」

「分かっている。君が彼のことを気にかけているのは。」

池村琴子は一瞬戸惑った。

その「気にかけている」という言葉には、何か別の意味が込められているようだった。

「実は、私は彼をただの友達としか見ていないの。」誤解されないように、池村琴子は自ら説明した。「彼は私が一番困っていた時に助けてくれた人で、友人であり家族のような存在。私のせいで彼が苦しむのは見たくないの。」

「彼が'W'でここまで頑張ってこられたのは、誰の力も借りず、自分の力だけで一歩一歩這い上がってきたから。山本正博、あなたが山崎三郎と手を組んで彼を狙うのは望まないわ。」

努力した人こそが、その地位に相応しい。

山崎三郎のような追従的で邪な考えを持つ人が最後に勝利するなんて、世の中の不公平さを感じずにはいられない。

彼女は山本正博を見つめたが、彼の目は深く静かな淵のように穏やかだった。

山本正博の性格からすれば、山崎三郎のような人との協力は適切でないことは分かっているはずだが、彼が'W'の誘惑に負けて、山崎三郎のような人と手を組むかどうかは分からなかった。