第473章 何が欲しい?補償してあげる

「高橋仙、これまでの利男の財産管理に感謝する。これからは『W』組織は我が木村家が管理することになる」木村爺さんは池村琴子を見つめ、感謝の言葉の中に脅しの色が混じっていた。

池村琴子が黙って微笑むのを見て、木村爺さんは続けた。「こうして単純に取り上げるのは気に入らないだろうことはわかっている。もちろん、ただで取るつもりはない。『W』傘下の会社を一つ、お前に任せよう。好きな会社を選んでくれ。望むものなら何でも補償しよう」

「私が望むものなら、何でも補償してくれる?」池村琴子は唇を曲げ、少し艶っぽく笑った。

「その通りだ」木村爺さんは頷いた。「さあ、何が欲しい?」

軽い笑い声が割り込んできた。山本正博は腕を組み、目尻を下げて笑っていた。

普段はほとんど無表情な彼が、心から笑うことは少なかった。

しかし、この笑みには三分の喜びと七分の軽蔑が込められていた。

木村爺さんは心中不満げに「正博、何を笑っているんだ?忘れるな、お前も木村家の血を引く者だ。木村家の全ては、お前とも無関係ではない」

「あなたの夢想と妄想を笑っているんです」山本正博は唇を歪めた。「おそらくご存じないでしょうが、今の『W』は、かつて木村利男が設立した組織とは既に異なるものになっています」

「それがどうした?この組織はお前の父が設立したものだ。我々には取り戻す権利がある」木村爺さんは厳しい表情を浮かべた。

「木村利男が最初に設立した組織は『J』と呼ばれ、全国でたった百人しかいませんでした。彼の死後、人員は二十人まで減りました。その後、琴子が引き継いで、今の姿にまで組織を育て上げたんです。残りの二十人も今では琴子の部下です。今になって組織を取り戻そうとするなんて、なぜ早くしなかったんですか?他人が育て上げた実を横取りしようというんですか?」

この言葉を聞いて、木村爺さんの表情が変わった。

こんな展開は予想していなかった。

なぜ当時の啓維株式会社の従業員が、たった二十人になってしまったのか?

もしそうだとすれば、高橋仙に組織を引き渡すよう要求するのは、さすがに厚かましすぎる。

「それでも『W』は木村家のものだ。利男がいなければ、高橋仙が組織を引き継ぐ機会もなかったはずだろう?」

木村爺さんは言葉を濁しながら、必死に抵抗を試みた。