動じない池村琴子を見て、松田柔子の心はますます冷めていった。
彼女は前もって調べていた。池村琴子がこのオークションに来たのは、特定の商品のためだと。
彼女は池村琴子が誰かの機嫌を取るためにこれを買おうとしているのだろうと推測し、池村琴子の思い通りにさせないために、「1億円」という価格を叫んだのだ。
もし池村琴子が値を上げなければ、今日誰も値を上げなければ、彼女がこれを買わなければならなくなる。
この銅像は、家に置いても不気味で、身につけることも食べることもできず、寄付する以外に何の用途もない。
松田家は今困窮しているのに、彼女が気が狂ったように寄付するものを買おうとしている。
そのとき、司会者が「1億円、2回目」と叫んだとき、松田柔子はすでにめまいを感じ始めていた。