第550章 張り合い

山口念が自嘲しているとき、池村琴子の一言が彼女の心の結び目を解いた。

「すみません、携帯を持ってきていなくて」

岡田月の顔に失望が隠せなかった。「そうですか」

実は誰もが知っていた。この時代に、携帯を持っていない人なんていないということを。

池村琴子がそう言ったのは、明らかに婉曲な「拒否」だった。

やはり、池村琴子のような強力なスポンサーも、誰でも支援するわけではないのだ。

池村琴子が断るのを見て、山口念の胸のつかえが下りた。

池村琴子はバッグからプレゼントを取り出して彼女に渡した。「私の新作デザインよ」

山口念は笑顔で受け取った。「あなたのデザインした物は今、市場で高値で取引されているって聞いたわ。あなたがデザインしたジュエリーを持てるなんて、私は幸せ者ね」

「池村さんは前回のコンテストに参加してから全日本で有名になって、今では日本の上流階級の人々が皆、あなたの新作を待ち望んでいるんですよ」岡田月はすぐに話に加わり、山口念を見ながら言った。「念、私は本当に羨ましいわ。池村琴子のような素晴らしい友達がいて。残念ながら、私にはあなたのような運はなくて、池村さんに支援してもらえないの」