044 社長様

福田のお婆様は唐沢行の口調が穏やかになったのを感じ、慎重に切り出した。表情も非常に緊張していた。「もう全て話し合えましたので、田中社長と一緒に宴会場にお戻りいただけませんでしょうか?」

結局のところ福田家は相手を完全に怒らせてしまったので、この時点で戻ってきてもらえるかどうかも分からなかった。

傍らでぼんやりとしている加藤恋を一瞥し、唐沢行は少し投げやりに答えた。「社長は貴家の宴会の雰囲気が好みではないようです。私が戻る際に、福田には事前に伝えておきます。」

彼が追いかけて出てきた時、加藤恋はすでに魂が抜けたような状態で、福田家の門から少し離れた場所にしゃがみ込み、目には悔しさと途方に暮れた表情が浮かんでいた。

「あの家にいる必要なんてないわ。」

加藤恋は機械的に首を回し、唐沢行に尋ねた。「私、何か間違ったことをしたのでしょうか?」