福田元は笑みを浮かべ、眉目に傲慢さを滲ませながら言った。「あなたが言うように、本当に西ローマの花瓶なら、数千万円なんて小銭、我が福田家にとってはたいしたことじゃないよ!」
加藤恋はその言葉を聞いて、思わず冷笑した。まるで簡単そうに言っているが、彼が福田家のために数千万円も稼いだことがあるかのように。
その女性は周りの人々を一瞥してから、ガラスケースを取り出した。中には...ポートランドの花瓶?
「まさか、こんなことが?」
「見間違いじゃないのか?これは大英博物館にあるはずでは?」
「この花瓶はたくさんあるから、そのうちの一つかもしれないじゃないか?」
人々は次々と議論を交わし、深い青色のガラスに白い模様が施された古代ローマの花瓶を観察した。ビクトリア時代には多くの人がこれを模倣していたことを考えると、目の前のものが本物か偽物かは分からない。
加藤恋は突然、松本鶴のノートで見たことを思い出した。ポートランドの花瓶が価値があるのは、「宝石浮き彫りガラス」という製法によるものだった。
この方法が素晴らしいのは、宝石彫刻の技法を応用しているからだ。まだ冷めていない濃い色のガラス器に白い溶融ガラスを加え、表面に薄い層を形成させる。取り出した後、表面の白いガラス層の余分な部分を取り除くと、濃い底色が現れる。これが花瓶の浅浮き彫り模様の由来だった。
福田のお婆様の目には貪欲な光が宿った。もしこれが福田家のものになれば...今日、福田桐子の誕生日を口実にしたのも、そのためだった。直接頼んでも相手は渋るかもしれないが、桐子の誕生日プレゼントとなれば、相手も断りづらいはずだ。
「東方の大旦那、これについてどうお考えですか?」福田元は東方雅史に向かって尋ねた。
東方雅史と加藤恋の間に何か不快な出来事があったことは早くから知っていた。福田元は様々な方面から探りを入れたが、詳細は分からなかった。今日、特に東方のお爺さまを呼んだ主な理由は、加藤恋が持ってくるものは必ずがらくたに違いないから、その時に評価してもらえば、二人の以前の恨みも晴らせると考えたからだ。
東方雅史は顎を撫でながら、うなずいて言った。「間違いない、これはローマ帝国時代から伝わる花瓶だ」