「それに、なぜこの娘が偽物だと言えば、この花瓶が偽物になるんですか?さっき東方のお爺さまがこれは本物で、一世紀も残る宝物だと言ったのを聞いていなかったんですか」木村琉衣の手のひらは汗でびっしょりだった。彼女は東京で多くの大きな取引をしてきたが、誰一人として気付かなかった。しかし今は……
東方のお爺さまはその言葉を聞いて、顔色が変わった。この連中が自分を巻き込もうとしているなんて!
「何を言い出すんだ。私がいつこれが本物だと言った?さっとざっと見ただけだ。上に何が書いてあるかなんて知らん。東方家を陥れようとするなんて、この業界で生きていけると思うのか」
この時、東方雅史は彼らが何を話しているかなど気にしていられなかった。もし斎藤徹がこの件で何か言い出したら、自分の立場が危うくなるだろう。
「木村さん、私たちは東京骨董協会を代表して、あなたに同行をお願いしたい。東京で出回っているこれらの偽物について、ご存知のことがあるのではないでしょうか」
斎藤徹の口調には脅しと誘いが混ざっていた。木村琉衣の目に一瞬冷たい光が走った。
「古美術商組合がどうしたというの?私が買った物が偽物だったとして、それが私の過ちになるの?」木村琉衣は理を通そうとした。「たとえ偽物を買って、うっかり持ち出してしまったとしても、どうというの?私が故意にやったという証拠でもあるの?」
「鑑賞会の前から、斎藤の爺さんは私に多くの贋作を見せてくれました。これらの偽造手法は結局同じようなものです」加藤恋は真剣に言った。「もしかして木村さんが偽造者なのでしょうか?」
木村琉衣は完全に動揺し、無意識に竜川の叔父さんを見た。竜川の叔父さんは当然自分が巻き込まれることを望まず、急いで口を開いた。「これが偽物だと確認されたなら、さっさと片付けましょう。まだ多くの宝物を見なければなりません。この女性のことは鑑定会が終わってから話し合いましょう!」