138 彼女は売らない

福田隼人が口を開こうとした時、加藤恋は首を振った。彼女はもう諦めていた。この人たちがどう言おうと、宝物を見抜く目を持っている人ばかりではないのだから。ただ早くこの件を終わらせて、病院で張本の叔父さんを見舞いたかった。

「大丈夫です。斎藤のお爺さま、東方のお爺さま、お二人で一緒に見ていただけますか。今は多くの人が目利きではなく、骨董品の真贋判断も確実ではありません。それなら、お二人で見ていただいた方がいいと思います。本物なら良いですし、偽物でも他の方法を考えます」

加藤恋は淡々と言った。たとえ本物だとしても、福田家の人々が密かにすり替えないとも限らない。そんなことは彼らならやりかねない。

加藤恋に目利きではないと言われ、福田元は即座に激高したが、福田鐵に厳しい視線を向けられ、まるで言葉を乱したことを咎められているかのようだった。福田元は拳を握りしめ、心の中で加藤恋のオルゴールが偽物であることを祈った。