まさか秋山心だとは思わなかった。加藤恋はベッドから起き上がった。この子がこんな時間に何があったのか、こんな時間に電話をかけてくるなんて。
「先に位置情報を送って。すぐに助けを手配するから」加藤恋は秋山心が自分を頼る理由を知っていた。結局、秘密を守るように頼んでいたのだから。
橋本様に電話をかけ、加藤恋は簡単に状況を説明した。東京も変わりつつあるようだ。秋山家の若様に手を出すなんて。でも、福田元のようなバカと一緒にいれば、トラブルに巻き込まれるのは当然か。
「加藤さん、すぐに人を連れて友人を助けに行きます。この件は私にお任せください。俺の縄張りで誰が熊の心臓を持って手を出すのか、見てやりましょう!」橋本様も驚いていた。こんな事件が起きるなんて。すぐに部下を連れて自ら助けに向かった。
秋山心は橋本様が車から降りてくる瞬間を見て、感動で涙が溢れそうになった。まさか人生でこの人に助けられる日が来るとは思わなかった。
「兄弟、何者だ。俺の縄張りで人に手を出すとは」橋本様は群衆を見渡し、一目で仕切れる人物がいないことを見抜いた。
若者は車から降りて橋本様と対峙しようとしたが、背後の老人が突然口を開いた。「若様、この方は東京でかなりの実力者です。ご主人様も以前、この方との正面衝突は避けるようにと」
「この人が?」若者は橋本様をじっくりと見た。文化人のような外見で、この世界の人間には見えない。まさに人は見かけによらないものだ。
「今日の件は不問に付す。だが、あのバカに伝えておけ。次に会ったら、今日のような幸運は二度とないとな」若者は低い声で言い、それ以上何も言わずに他の者たちに車に戻るよう指示した。彼らが去るまで、秋山心はようやく安堵の息をついた。
「秋山さんですね?加藤さんから連絡を受けて来ました」橋本様は自己紹介をした。「加藤さんの前で良い話を伝えていただければ幸いです。あの若者が何者なのか、私たちに機会をください。必ず早急に調査いたします。お足をお怪我のようですね、すぐに病院へお連れしましょう」
秋山心は頷くだけで、それ以上は何も言わなかった。
病院に着くと、医師が慎重に診察して言った。「怪我は大丈夫です。警察にも連絡しましたので、すぐに来るはずです。その時に襲撃された件について話してください」