「ふん、この世界は弱肉強食よ。あなたみたいな聖人ぶった人がいい目を見るとでも思ってるの?メイクと衣装が合ってないからステージから追い出されるのを待ってなさいよ。『望花』どころか、その場で曲を作ったとしても、誰も見向きもしないわよ」
野木早香の得意げな様子を見て、東根瑞希は本当に腹が立った。加藤恋が止めていなければ、きっと飛びかかって相手の口を引き裂いていただろう。
しかし加藤恋も今は反論できなかった。準備していたのが『女王の冠』で、メイクと衣装にも心血を注いでいたのだから。もうこうなってしまった以上、何か方法を考えなければならない。野木早香の言葉がかえってヒントになった。
「弱肉強食って何かを見せてあげましょうか」そう言って加藤恋は脇に座り、紙とペンを取った。