「あ、ありがとうございます……私は葉野言葉です。」加藤恋に助け起こされた少女は小声で話し始め、そしてディレクターが彼女の番号を呼んだのを聞いて、急いでステージの前に歩み出た。
「葉野選手、伴奏は必要ですか?」審査員は笑顔で彼女を見つめた。今回の最年少の参加者で、一般投票で選ばれた素人だ。おそらく第三ラウンドまで持たずに落とされるだろう。
「はい……伴奏は必要ありません。今から歌ってもいいですか?」審査員の承認を得て、葉野言葉はゆっくりと目を閉じた。
まさか聖母の賛歌?こんな場面でこんな曲を歌う人がいるのか?
葉野言葉が歌い出すと、その場の審査員たちの表情が一瞬で変わった。こんなにも甘美で純粋な声質に、会場の雰囲気が一変した。天使が歌うとすれば、きっとこんな声色だろう。
楽屋で見ている人々も驚いていた。夏川晴海は葉野言葉を見つめた。さっきまでおどおどしていた様子が、歌い出すと別人のようだった。この少女は彼らが思っていた以上の実力の持ち主のようだ!
神聖で、敬虔で、透明感のある声…きらめく王冠と相まって、まるで聖なる姫が教会のステンドグラスの下で祈りを捧げているかのようだった。
「あなたが歌うときの集中力が素晴らしい。生まれ持った良い声質と容姿を無駄にしないでください。」
「歌は素晴らしいけれど、オーラがちょっと足りないわね。次のステージでは緊張せずに、ゆっくりと自信を持っていけばいいわ。」
「衣装はもう少し調整が必要ね。王冠は良いけど、全体的に同系色でまとめれば、もっと良くなるわ。」
「先生方のご指摘ありがとうございます。次回は…さらに頑張ります。」葉野言葉は小声で答えた。自分が最初の合格者になるとは思っていなかった。
ステージに上がってから、みんなはようやく初舞台が30人から25人を選抜する選考だと知った。つまり5人が脱落することになる。
葉野言葉の前の2人はすでに会場を去っており、彼女がこの回の最初の合格者だった!
「こんにちは!葉野さんですよね?東京予選で最初に合格した選手として、どんな感想をお持ちですか?」
「なぜこの曲を選んだんですか?事前に準備していたんですか?」
「楽屋の様子はどうでしたか?私たちに共有していただけますか?」