「あ、ありがとうございます……私は葉野言葉です。」加藤恋に助け起こされた少女は小声で話し始め、そしてディレクターが彼女の番号を呼んだのを聞いて、急いでステージの前に歩み出た。
「葉野選手、伴奏は必要ですか?」審査員は笑顔で彼女を見つめた。今回の最年少の参加者で、一般投票で選ばれた素人だ。おそらく第三ラウンドまで持たずに落とされるだろう。
「はい……伴奏は必要ありません。今から歌ってもいいですか?」審査員の承認を得て、葉野言葉はゆっくりと目を閉じた。
まさか聖母の賛歌?こんな場面でこんな曲を歌う人がいるのか?
葉野言葉が歌い出すと、その場の審査員たちの表情が一瞬で変わった。こんなにも甘美で純粋な声質に、会場の雰囲気が一変した。天使が歌うとすれば、きっとこんな声色だろう。