実は今回の須田山は本当に凄かった。オーディションを使って映画の話題作りをし、『望花』は須田山の映画界復帰という旗印だけで第一波の注目を集めただけでなく、その後のオーディションでもずっと人々の視線を集め続けた。
さらに審査員陣も豪華で、両山健先生を除いても、人気実力派歌手の竜川尚、最年少の映画賞受賞者白井景、須田山監督、そして国際的なピアニストの秋山花がいた。この布陣だけでも、オーディション番組と称して金持ちの子供をデビューさせる番組を何本も圧倒していた。
加藤恋は黙ったまま、ピアノの横に座った。実は彼女も何を歌うべきか分からなかった。準備していた曲は盗まれ、今抗議しても単なる騒動になるだけで、短時間では説明する機会もない。一体何を歌えば自然で失礼にならないだろうか?