「恋ちゃん、オーディションで芸能人にたくさん会えるんでしょう!次の審査は何をするの?私も入れてもらえない?竜川尚と白井景に会いたくて仕方がないの!私、二人のファンなの。それに秋山花先生も本当に美しいわ」
福田桐子は福田嘉のたわごとなど気にも留めなかった。今や福田家に嫌悪感しか抱いていなかったからだ。福田のお婆様にとって、家族の中で人間扱いされているのは福田鐵と福田元だけで、他の者など目に入れていなかった。
あの日聞いた件については...既に調査を依頼している。もし本当だとすれば、あの毒婦には必ず代償を払わせてやる。
「ええ、会えますよ。次の審査内容はまだ分かりませんが、みんなダンスだと予想して猛練習しているところです」なぜか、加藤恋は福田桐子の敵意が少し薄れたように感じた。
「ふん、賞を取れなければ意味がないわ。そんな情けない結果で帰ってきたら、福田家の恥よ!」加藤恋の言葉を聞いて、福田嘉は冷ややかに言い放った。
加藤恋が何か言おうとした時、突然電話が鳴った。「恋!電話に出てる?」
向こう側の夏川梅の声に加藤恋は驚いた。夏川梅は最近大きな展示会の準備で海外に忙しく、しばらく連絡を取っていなかったのだ。
「ふん、あの娘が死んでないか聞かないのか?」隣にいた男性の言葉に、加藤恋は驚いた。
「死んでたら私の電話に出られるわけないでしょう?」夏川梅は不機嫌そうに言い返した。
「お前が育てた子は神様も欲しがらないだろうな!だから言ったじゃないか、あんなデタラメな話じゃ若い娘に何の影響も与えられないって」その男性は得意げに言った。
「あなたったら、ますます毒舌になってきたわね。その長い舌、引っこ抜いてやろうか?」
加藤恋はようやく理解した。電話の向こうには二人いて、一人は夏川梅で、もう一人は誰なのか分からない。
「恋、あなたが誹謗中傷されてることを今日知ったの。ひどい人たちね、でたらめを言いふらして!それに夏川晴海のことも、私が解決するから、あなたは試合に集中して...そういえば、第一回の試合で弾いた曲は栞のものよね!彼女が小さい頃から聴いていたわ。あなたたちのピアノ、まるで瓜二つ...」