第262話 第3ラウンド開始

「今さらそんな綺麗事を言って何になるの?葉野言葉は今朝まで何ともなかったのに、隣人として今の状態になった理由を説明できるんじゃない?」温井詩花は安藤奈々がぶりっ子だろうが何だろうが気にせず、彼女の横に立って大声で詰問した。

「あなた...本当に冷血な人ね。ゴちゃんがこんな状態なのに、まだ喧嘩するなんて。きっと彼女は友達同士が喧嘩するのを見たくないはずよ。」

「私たち全員が何が起きたのか知りたいの。言葉が無理由でパニックになるはずがないし、私が駆けつけた時には、彼女はもう気を失っていたわ。」言葉の呼吸が落ち着いてきたのを確認して、加藤恋はようやく安堵の息をつき、スタッフが彼女を医務室に運んだ後、安藤奈々との対峙に加わった。

安藤奈々は急いで涙を絞り出し、哀れな声で二人に言った。「そんな風に言うってことは、私が言葉に何かしたと疑ってるの?もし私がスタッフを呼ばなかったら、言葉は危なかったのよ。」

「あなたね!」温井詩花が飛びかかろうとしたが、加藤恋に止められた。

番組のディレクターは加藤恋と温井詩花を見て、この二人は敵に回したくない相手だと思い、急いで安藤奈々に声をかけた。「みんながこんなに経緯を気にしているんだから、きちんと説明する必要があると思うけど。」

安藤奈々はベッドに横たわる言葉を一瞥し、両手を強く握りしめ、心の中で彼女への憎しみが一層増した。

全て言葉のせいで、こんな恥ずかしい思いをさせられて。彼女はずっと可愛らしさと無邪気さを武器にしてきて、今まで一度も失敗したことがなかったのに...でも今は疑われ始めている。

「うぅ...私は本当は彼女のプライバシーを暴露したくなかったの。でも、どうしてみんな私を疑うの?言葉は大事な写真を無くしてしまって、私はずっと探すのを手伝ってたの。後でその写真が彼女が地下施設に出入りしていた証拠だってわかって、ネットでの悪い噂を見て、本当にそうなのか気になって。それに私の方が少し年上だから、助けられることがあれば助けたいと思って...でも彼女の反応があんなに激しいなんて思わなかった!」

「もう黙って。」温井詩花は彼女のぶりっ子ぶりを見て、怒りが収まらなかった。