363 花火ショー

彼は物憂げに欠伸をしながら二日酔いを覚まし、頭を上げて広大な星空を見上げた。手に持った赤い液体が微かに揺れ、木村信彦はグラスの半分を一気に飲み干すと加藤恋の方を見た。彼の目には廃墟のような虚ろさが宿り、異常なほどの疲れが見て取れた。

加藤恋は木村信彦の横に少し距離を置いて座っていた。結局のところ、目の前の男を完全には信用できなかったし、今いる場所から逃げ出すのも難しいため、距離を保つしかなかった。

彼女は空に浮かぶ月を見上げた。かつては福田隼人と幸せに暮らすことを夢見ていた。結婚式で福田隼人が償いをしてくれた時も、とても幸せだと感じていた。でも今になってようやく分かった。二人の関係は常に宙ぶらりんで、問題が起きると一気に落下して、粉々に砕け散ってしまうのだと。

「あの星座が何か知ってる?」今日は天気が良く、星がとてもよく見えた。

加藤恋は木村信彦を一瞥して、「星座なんて信じないわ」と言った。

加藤恋の言葉を聞き流すように、木村信彦は独り言のように続けた。「あそこはさそり座だ。都会ではめったに見られない。郊外にいて、天気が良くて良かった。さそり座は蛇の象徴で、最も知恵と実行力がある星座とされている。君は何座?」

真面目くさって解説する木村信彦を見て、加藤恋は眉をひそめずにはいられなかった。星座なんてどうでもよかった。今は早く帰りたいだけだった。

車の屋根の上で赤ワインを飲みながら星を見るなんて、よくもまあこんなことを思いつくものだ。

「私も自分が何座か知らないわ。だから言ったでしょう、そんなの信じないって」加藤恋もグラスを少し傾けた。失意の時に人が酒を飲みたくなる気持ちが分かった気がした。酒を飲み干すと、すべての苦しみや憂いも一緒に流し込まれていくような気がした。

「俺も昔は信じなかった。でも時には信じざるを得ないこともある」木村信彦の視線が加藤恋に注がれた。彼女の目は霧のように幻想的で、重い秘密を抱えているようだった。加藤恋は彼が何か事情を抱えた男だと分かっていたが、他人の心を揺さぶるような話には興味がなかった。

加藤恋がどんな言い訳で立ち去ろうかと考えていた時、突然携帯が鳴った。急いで電話に出ると、温井詩花からだった。