363 花火ショー

彼は物憂げに欠伸をしながら二日酔いを覚まし、頭を上げて広大な星空を見上げた。手に持った赤い液体が微かに揺れ、木村信彦はグラスの半分を一気に飲み干すと加藤恋の方を見た。彼の目には廃墟のような虚ろさが宿り、異常なほどの疲れが見て取れた。

加藤恋は木村信彦の横に少し距離を置いて座っていた。結局のところ、目の前の男を完全には信用できなかったし、今いる場所から逃げ出すのも難しいため、距離を保つしかなかった。

彼女は空に浮かぶ月を見上げた。かつては福田隼人と幸せに暮らすことを夢見ていた。結婚式で福田隼人が償いをしてくれた時も、とても幸せだと感じていた。でも今になってようやく分かった。二人の関係は常に宙ぶらりんで、問題が起きると一気に落下して、粉々に砕け散ってしまうのだと。