367 彼女を探していた

加藤恋は氷水に浸した布を男性に渡し、彼の口と鼻を覆わせた。「早く出て行って」

男性が起き上がった時、彼は加藤恋を認識したようで、途切れ途切れに話し始めた。「あなたを...知っているような...あなたは...」

「今はそんな話をしている場合じゃないでしょう?早く行って!」

「あなたはどうするんですか?」

「私の友人がまだここにいるの。逃げ出せたかどうか分からないから、もう一度探してみます。見つからなかったら私も避難します」加藤恋の声はすでに掠れ気味だったが、それでも更に奥へと這って行った。

もしかしたら福田隼人はあのドアの所で立ち往生していて、まだ出られていないかもしれない。

濃い煙で加藤恋は目を開けることもできず、大量の一酸化炭素で目まいも始まっていた。激しく咳き込みながら、ワインに浸した布で口と鼻を覆った。もう出なければならない、このままでは持たない...福田隼人は、本当に逃げ出せたのだろうか?