366 死に場所

「言葉?詩花?もう帰ったんじゃなかったの?」白井景の声が言葉の後ろから聞こえた。

二人は振り返って白井景を見つめ、言葉の目から涙が溢れ出した。「白井先生……」

詩花は気力を振り絞って駆け寄り、「福田隼人!あなたも福田隼人を見かけましたよね!彼はここにいますか?」

「気付かなかったけど、彼も今日のパーティーにいたの?」白井景は眉を上げ、ダンスフロアの中心で踊っていた人が加藤恋の夫に似ていたことを思い出した。

「恋が彼を探しに中に入ってしまったんです。白井先生が見かけたら必ず連絡してください。」

それを聞いた白井景の表情が一変した。「彼女、正気を失ったの?火の勢いがこんなに強いのに、今入るなんて。」

詩花は白井景の言葉を無視し、大声で叫んだ。「今夜のベストカップルを見た方はいませんか?見かけた方は教えてください。」

言葉から聞いた話では、今夜のパーティークイーンのパートナーが福田隼人に似ていたという。詩花はもしかしたら恋が人違いをしているのかもしれないと思い、その人を見つければ、恋も出てくるかもしれないと考えた。

「あそこです。さっきその男性が美女を抱きかかえて出てきたのを見ました。本当に天が二人を…」その人の言葉を最後まで聞く間もなく、詩花はふらつきながら群衆を掻き分けた。

その時、福田隼人はマスクのことも気にせず、そこに立っていた。スーツは所々破れ、顔には数カ所の傷があり、傍らでは雲原静が彼の顔の血を拭い、傷の手当てをしていた。

彼は非常に機転の利く人物で、爆発の瞬間に判断を下し、どこを通れば被害が最小限に抑えられるかを把握していた。

福田隼人が美女のケアを悠々と受け、まるで災難を乗り越えて平穏な日常に戻ったかのような様子を見て、詩花の胸の内で怒りが爆発した。まだ完全に酔いは覚めていなかったが、怒りに任せて我慢できなくなり、一気に駆け寄って福田隼人の足を蹴り飛ばし、二人は地面に倒れた。

詩花は激しく叫んだ。「このクソ野郎!本当にここにいやがって!他の女とダンスしておいて、恋を火事場に入れるなんて、この人でなし!恋に何かあったら、絶対に許さないわよ。」

「あなた誰?何をするの?」雲原静は焦った様子で声を上げた。やっと二人の雰囲気が良くなってきたところなのに、この女が突然現れて、恋が探しているなんて言い出して。