指導者たちが次々とパフォーマンスを終える中、温井詩花の番が近づいていた。彼女は家に帰った時、秋山花が自宅のリビングに座っていたことを思い出した。
「本当のことを教えてくれない?私の今回の得票数は水増しされたものなの?母はどこ?今すぐ会いたいの!」当時、彼女は断固とした態度で言い張ったが、秋山花は全く動じる様子を見せなかった。
「そんな話をどこで聞いたの?それとも自分のファン層に自信がないの?」
彼女がこのような質問をする度に、いつもこうしてごまかされてしまう。
「私はただ答えが欲しいだけなの。」
「詩花ちゃん、普段はネットをあまり見ないのに、今回はなぜそんなにネットの噂に影響されているの?最後の舞台のプレッシャーが大きすぎて、自分の母親まで疑うようになったの?」
この時、温井詩花の頭の中には、秋山花の余裕そうな表情が浮かんでいた。これらは全て自分の母親がやったことだと確信していた。
「もしかして誰かが変なことを言ったの?」
温井詩花は秋山花の言葉を思い出した。彼女を知る限り、もしそんなことがなければ、はっきりと否定するはずで、こんな疑問を投げかけることはないはずだった。
温井詩花は前回の自分のパフォーマンスが2位に値しないと感じていると言ってその場をしのいだが、秋山花の態度も明らかに不自然だった。
「ファン投票とパフォーマンスは関係ないわ。そんなことを気にしても仕方ないでしょう。安心して試合に集中すればいいの。それに実力で這い上がってきた人の票を操作する人なんていないわ。それに先生の性格を考えれば、もし本当に票を操作したのなら、なぜあなたを1位にしなかったの?」
この人たちはいつもこう、三分の説教と七分のなだめすかし。いつになったら対等な立場で話し合えるのだろう。
温井詩花はイヤホンを装着し、竜川尚の「温井詩花選手、ステージへどうぞ」という声とともに舞台へ飛び出した。
彼女はいつもの自分のスタイルを貫いた。ステージは格好いい砂漠を背景に、最初はSUVの上に立ち、音楽が始まると「On my way」を歌い始めた。サビに入る前に、車の上からバック宙を決めて地面に着地した。
「超クール!このお姉さん本当にすごい。私、前は2位に値しないと思ってたのに!」
「詩花!詩花!」
「クイーン降臨!」