383 名医が来場

「あなたに言っておきますが、奥様は本当にすごいんですよ！」木野登は急いで説明した。「父の手術の前から奥様のおかげで、時間を稼ぐことができたんです。」

しかし、中村亜梨香は木野登の言葉を信じようとせず、加藤恋を軽蔑するような目で見た。「お兄さん、おじさんの治療に必要なのは神醫であって、インチキ医者じゃないわ。それに、どんなに先進的な技術でも無理だって言われてたのに、彼女が来ただけで治せるわけないでしょう？」

加藤恋は中村亜梨香を見つめた。この女性は明に暗に自分を皮肉っており、まだ自分の実力を見もしないうちから詐欺師の一味と決めつけていた。

「お嬢さん、何を言っているんですか？」その時、病室の洗面所から老人が出てきて、まくしたてる中村亜梨香を見た。

「小瀧先生！私の兄は騙されやすくて、どこの誰とも分からない人を連れてきてしまったんです。やはり先生に直接おじさんを診ていただく必要があります。」

「はっはっは、お嬢さん、若いからといって本当の実力がないとは限りませんよ。この方にも本物の腕があるかもしれません。」小瀧武は謙虚に、加藤恋に優しく微笑みかけた。

しかし中村亜梨香は冷笑いながら言った。「小瀧先生はご存じないでしょうが、私の兄は実直すぎるんです。病気になると藁にもすがる思いで騙されやすいんです。私が心配なのはそれなんです。」

「お前...ここでそんな無茶な事を言うな！」木野登は顔色を悪くし、中村亜梨香を諫めた。

「私の言っていることが何か間違ってるの？お兄さん、誰でも知ってることよ。この加藤恋は福田家で疎まれている嫁なのよ。それに彼女は元々小さな女優でしょう？いつから医療ができるようになったの？」

木野登はため息をついた。彼が中村亜梨香との関係が良くない理由は、まさにこの女性の視野の狭さにあった。

実際、張本教授から加藤恋を探すように言われた時、彼も少し戸惑った。結局のところ、加藤恋は彼の目には普通の若い女の子にしか見えなかったのだ。どうしてこんな腕前があり得るのか？

「奥様？ふん、あなたが私の兄をどうやって騙したのか知らないけど、ここでは絶対にあなたの悪だくみは通用しないわ。この小瀧先生は醫術を極めるために全国を歩き回ってきた方よ。あなたみたいな詐欺師とは比べものにならないわ。早く帰ることをお勧めするわ。このまま醜い事態になる前にね。」