福田隼人の体力は良好で、加藤恋を背負っても特に負担はなかった。まだ体調が完全には回復していないため、福田隼人の歩みは遅かったが、しっかりとした足取りだった。
この時、彼は加藤恋が見えないことをむしろ幸いに思った。周りのスタッフたちが二人を見つめていて、福田隼人の耳が真っ赤になっていたからだ。
加藤恋は福田隼人の汗を感じることができた。後頭部から小川のように流れ落ちる汗を、彼女は手を伸ばし、自分のオートクチュールのドレスの袖で優しく拭った。
福田隼人からは汗の臭いは全くせず、むしろ爽やかなグリーンオリーブの香りがした。それに気づいた加藤恋の顔は更に赤くなり、知らず知らずのうちに福田隼人の背中にぴったりと寄り添っていた。
福田隼人は幅広い筋肉質なタイプではなかったが、彼女に頼れる感覚を与えてくれた。そして福田隼人は彼女に安心感を与えてくれる、とても貴重な存在だった。