345 純情な触れ合い

福田隼人の体力は良好で、加藤恋を背負っても特に負担はなかった。まだ体調が完全には回復していないため、福田隼人の歩みは遅かったが、しっかりとした足取りだった。

この時、彼は加藤恋が見えないことをむしろ幸いに思った。周りのスタッフたちが二人を見つめていて、福田隼人の耳が真っ赤になっていたからだ。

加藤恋は福田隼人の汗を感じることができた。後頭部から小川のように流れ落ちる汗を、彼女は手を伸ばし、自分のオートクチュールのドレスの袖で優しく拭った。

福田隼人からは汗の臭いは全くせず、むしろ爽やかなグリーンオリーブの香りがした。それに気づいた加藤恋の顔は更に赤くなり、知らず知らずのうちに福田隼人の背中にぴったりと寄り添っていた。

福田隼人は幅広い筋肉質なタイプではなかったが、彼女に頼れる感覚を与えてくれた。そして福田隼人は彼女に安心感を与えてくれる、とても貴重な存在だった。

救急車の中で看護師が慎重に加藤恋の目を診察し、少し深刻な表情を見せた。「幸い量が多くなかったので、左目の方が少し重症です。しばらく見えない状態が続くでしょう。右目は今日洗浄して、明後日には少し視力が回復するはずです。この数日間は目を使いすぎないよう、十分な休息を取ってください。」

加藤恋は頷き、救急車の中で静かに目を閉じていた。そのとき、隣に座った若い看護師が恐る恐る加藤恋に近づいて言った。「あ、あの、加藤恋さんですよね?私、『望花』の公演を見ました。本当に素晴らしかったです。涙が止まりませんでした。歌が本当に上手で、須田山監督はあなたを選ぶべきだと思います。あの、写真を一緒に撮っていただけませんか!」

「はい、いいですよ」加藤恋の穏やかな笑顔を見て、その若い看護師は勇気を出して尋ねた。「さっきネットで見たんですけど、目のことは夏川晴海さんがやったって本当ですか?」

その言葉に加藤恋は答えなかった。この件については彼女もまだ知らず、夏川晴海なのか、それとも夏川晴海の背後にいる誰かなのかは、回復してから調べる必要があった。

「こちらは旦那様ですか?福田さん?初めてお見かけします。これまで福田さんは公の場にほとんど出られなかったですよね。実際にお会いしてみると、本当にお似合いのカップルですね!」