409 迷いの中で

衆人の目の前で、木村玄と鈴木和は全員の視線を浴び、須田透は目の前の人物を信じられない様子で見つめていた。しかし、木村玄は冷静さを保ち、加藤恋を見て言った。「それはあなたの推測に過ぎません。何か証拠はあるんですか?」

「私たち福田家は東京でも名の知れた名家です。あなたのそんな小細工では誰も騙せませんよ」加藤恋は携帯を取り出し、すぐに電話をかけた。

「宝石鑑定の専門家を呼べば、私の言っていることが本当か嘘かすぐにわかります。それに、この『高橋先生』こそが本物の達人だと言っていたのに、なぜ先ほどから彼の言動は全てあなたの目配せ次第なのでしょうか」

「貴様!」正体をその場で暴かれ、木村玄は怒りと驚きが入り混じった表情を浮かべたが、それでも冷静さを保っていた。この加藤恋にはまだ証拠がない。ここから逃げ出せれば、まだ挽回のチャンスはある。

そう考えながら、木村玄は「鈴木和」を演じている男に合図を送った。鈴木和は急いで傲慢で怒った様子を装い、「お前たちが老夫を全く眼中に入れていないのなら、我々はここを去るまでだ。こんな粗末な品物なら、鑑定士が何を鑑定できるというのだ!ふん、こんなボロ服など、くれても要らんわ。須田透よ、お前の手元で腐らせておけ!」

二人の言葉を聞いて、須田透と福田嘉は死人のように青ざめた。大儲けできるはずだった機会が、加藤恋の邪魔で台無しになってしまうとは思いもよらなかった。

「奥様!」木村玄と鈴木和が言い訳をして逃げ出そうとし、周りの人々が自分に詰め寄ろうとする中、加藤恋はついに竜川五郎を待ちわびていた。

竜川五郎は走って入ってきて、重要な知らせを報告した。「奥様、お客様が到着されました。小林様が東方のお爺さまにお願いして来ていただいたそうです」

加藤恋は喜色を浮かべ、竜川五郎に向かって言った。「すぐにお通ししなさい!」

その後、加藤恋は木村玄を見て笑いながら言った。「私が何と言ったか覚えているでしょう?『まず、私と高橋の爺さんは旧知の仲なのです』と」

この時の木村玄は両手を強く握りしめ、体を震わせていた。この加藤恋は一体何者なのか!

彼は東京で少なくとも八ヶ月は暗躍してきた。数え切れないほどの富豪を騙してきたのに、今や加藤恋のたった数言で、これまでの長い間の策略が台無しになってしまった。しかも今は少しも抵抗の余地がない。