「よし、丸山!秋山さんの部屋から信号源を見つけたけど、携帯電話も同じような波長を持っているから、秋山さんがテロ組織の共犯者だとは言えないよ」
先頭に立つ中年の男性は微笑んで、それ以上は何も言わなかった。
「君たちは先に出ていってくれ。残りのことは私が秋山さんと二人で話し合う。先にあの小さな助手に聞いてみてくれ」
「はい!伊藤隊長、すぐに行きます」温井康彦は秋山花を一瞥したが、何も言わずに立ち去った。
伊藤隊長は秋山花を上から下まで眺め、「近くで見ると、女優さんは本当に美しいですね」
「伊藤隊長、何か言いたいことがありますか?今、調べるべきものは全て調べ終わったはずです。残りのことは私とは関係ないのではないですか?」秋山花は眉をひそめ、本当に緊張し始めていた。
「ハハハ、この件があなたに関係があるとは言っていません。先ほどまで私があなたを守っていたのをご覧になったでしょう」伊藤隊長と呼ばれる男性の表情は深刻だったが、目には細かな光が輝いていた。
この種の眼差しを秋山花はよく知っていた。彼女は微笑んで、伊藤隊長がテーブルに置いた手に触れようとした。
「それならば、伊藤さん、私を出してくれませんか?」秋山花の目には嫌悪感と軽蔑が満ちていたが、彼女には選択の余地がなかった。今日、国家安全保障局に連行されたことが漏れ出せば、遊川前子が出てきても彼女の評判は台無しになるだろう。
「女優さんのことは噂で聞いていましたし、手元の情報も少なくありません。しかし、まさか向井家の人々に手を出すとは思いませんでした。なるほど、今になって相手があなたを追い詰めているわけですね。向井家の前であなたなど何の価値もありませんよ」
「向井家?」秋山花はその言葉を聞いただけで、思わず向井栞のことを思い出した。「伊藤隊長は、この背後に何があるのかご存知なんですね?」
「あの年にあなたが何をしたのか知っているだけでなく、その証拠も...」伊藤隊長はそう言いながら、テーブルの端にある書類の束を軽く叩いた。
秋山花は突然笑顔に変わり、非常に親密に伊藤隊長の胸に手を這わせた。
...
半月が過ぎ、加藤恋は川島芹那の新しい薬を作る時期だと思い出したが、予想外なことに川島芹那は病院を去っていた。