福田隼人は何かがおかしいと気づき、急いで車を人目につかない場所に停め、慌ててクリスタル別館の中へ向かった。なぜ福田嘉が突然加藤恋をここに招待したのか、どう考えても不自然だった。考えれば考えるほど違和感を覚え、足取りも躊躇いがちになった。
クリスタル別館の中は、とても賑やかだった。
井野忠は親しげに石田静の皿に魚の一切れを取り分けながら言った。「昔、ここの料理が大好きだったよね」
石田静は機械的に頷いただけで、かすかに微笑む程度で余計な言葉は発しなかった。時折、井野忠をじっと見つめ、その眼差しには何か測り知れないものが宿っていた。
井野忠はずっと我慢していたが、とうとう耐えきれずに口を開いた。「昔はとても活発な性格で、はっきりと話していたのに、どうして...」
石田静の手の箸が再び止まり、やっと柔らかくなっていた舌が再び縺れ始めた。
刑務所に陥れられて以来、彼女は極度に内向的になり、何日も一言も話さなくなった。あんな場所では、余計な言葉を発すれば発すほど問題が起きやすく、看守も彼女が寡黙なことを咎めることはなかった。
二人の会話は順調に進んでいて、石田静も一時的に気が緩んでいたが、井野忠のこの一言で、現在の自分の立場がいかに卑しいものかを思い出させられ、一瞬にして元の殻に閉じこもってしまった。
「ただの世間話のつもりだったんだけど...」井野忠は彼女が再び座席に縮こまるのを見て、少し気まずそうにした。心の中で石田静に対する不快感も芽生え始めた。この女は今、あまりにも個性がなさすぎる、本当に好きになれない。
石田静は頭を下げ、目を伏せたまま、軽く頷いた。
井野忠は口角を上げて笑った。「知ってる?今日あなたが出所したこと、妹さんも知っているはずだよ」
石田静の体が思わず震え、手の箸がテーブルに落ち、顔色が一瞬で真っ青になった。
井野忠は何か面白いおもちゃを見つけたかのように、独り言のように続けた。「聞いた話では、彼女はとても喜んでいて、あなたに会いたがっているらしい。さすが姉妹の情というものだね。もしかしたら今夜、クリスタル別館に来るかもしれないよ!」
「まさか...」石田静は小声で言った。
「ん?」井野忠は興味深そうに口を開いた。こうなると先ほどより面白いじゃないか。