今日の遺体安置所の警官が誰なのか分からないが、こんな重要な書類を目の前に置いているなんて、相当な身分と地位の持ち主に違いない。
東京の警察署でこんなことが起きているなんて...加藤恋の心臓は激しく鼓動し、一瞬何を言えばいいのか分からなくなった。
もしこれが本当なら、彼女はさらに厄介な事態に巻き込まれることになるだろう。しかし、この書類だけでは背後にいる黒幕が分からず、相手を脅すにしても、この書類だけでは意味がないと加藤恋は感じていた。
今一番重要なのは、この警察署が一体何を企んでいるのかを確認することだ。
そう考えた加藤恋は目を冷たくし、携帯を取り出して唐沢行にメッセージを送った。「もう一つお願いがあります。私たちの会社の年間税務状況以外に、最近どの会社が資産を移転しているか、私たちの子会社も含めて全て調べていただけませんか。」
唐沢行は加藤恋の要求を奇妙に感じたが、特に何も言わず、ただ彼女の要求通りに行動した。
加藤恋は考える暇もなく遺体安置所に入った。温井康彦も石田海香の死因に疑問を持っているようで、彼女の遺体を冷蔵庫に入れず、法医に検査させただけだった。
加藤恋は生きている人の治療には慣れていたが、これが初めて死者と向き合う経験で、心の中で少し不安を感じていた。
石田海香の顔を見ていると、会った時の彼女の活発な様子を思い出し、吐き気を催してしまった。
しかし、不思議なことに、石田家はいつもこの娘を大切にしていたはずなのに...どう考えても奇妙で、一時的にこの事件のどこが不自然なのか理解できなかった。
彼女は不快感を我慢しながら石田海香の遺体に手を伸ばし、詳しく検査した。確かに転落死の特徴と一致していた。しかし、頭蓋骨骨折や体の複数箇所の骨折以外に、何か違和感があった。彼女は歯を食いしばって石田海香の体を覆っている白い布を剥がすと、肺が少し腫れているのを発見し、手で押してみて驚いた。
まさかこんな...これを見ると、その日必ず他の人もいたはずだ!
石田家の姉妹、井野忠、福田隼人、石川直以外に、その夜現場には六人目がいた。