第115章 記憶喪失

二千日の歳月、鈴木静海にとって、もう何も諦められないものはないはずなのに?

もし彼女と新たに始めたいのなら、なぜ中村霜との婚約を残したのか?

中村楽はもう鈴木静海と話す気もなく、ドアを閉めてしまった。彼が彼女の手を掴んでいたことも気にせずに。

鈴木静海の手は挟まれそうになった。彼は体を硬直させたまま、そこに立ち、固く閉ざされたドアを見つめていた。

心臓が激しく痛むため、彼は呼吸を静かにした。冷たい血液が、少しずつ沸騰し始めた。

彼の女の子が、戻ってきた、戻ってきた……

当時Mの国から伝わってきた知らせでは、彼女は交通事故で亡くなったとのことだった。鈴木静海は決して信じようとせず、特殊部隊を派遣し、海外で何度も何度も捜索を行った。

しかし、何の手がかりもなかった。

母親を含め周りの人々は皆、中村楽はもう亡くなったと言った。