第199章 婚約破棄

一橋逸飛は続けて言った。「当時、おじさんは鉄血の手段で家族内の混乱を一掃し、大房と二房に余地を残さなかった。お婆様もお爺様も、彼を止めることはできなかった。」

「言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい。回りくどい言い方は必要ないわ。」大夫人は冷たく鼻を鳴らした。

今や一橋家は一橋貴明の掌中の物だが、お爺様はまだ目覚めておらず、お婆様の体調も完全には回復していない。

結局のところ、一橋貴明に従うことを潔しとしない者がいる。

しかし、もしお爺様が一橋貴明の人によって治療されたら、状況は全く異なってくる。

そうなれば、大房は本当に一切のチャンスを失うことになる。

大房の者たちは皆六、七十歳で、もう片足は棺桶に入っているようなものだ。晩年になって、安らかに余生を送ることもできず、人の顔色を窺わなければならない。

これは、どうしても受け入れられないことだった。

一橋逸飛は目の奥の光を隠しながら言った。「もしお婆様が私と久我羽との婚約を解消して、久我月を追いかけることに同意してくれれば、その時は、私たちも久我月にお爺様の治療をしてもらえます。」

「その時になれば、おじさんも世間の非難を恐れて、甥の嫁を奪うようなことはできないでしょう。」

既成事実ができてしまえば、潔癖症の一橋貴明が、甥が寝た女を欲しがるはずがない。

一橋逸飛は今、久我月は久我羽より千倍も万倍も良いと感じていた。ちょうど久我羽との婚約を解消したいと思っていたところに、このような好機が訪れた。

「何を言っているの？」

大夫人は自分の耳を疑うかのように、少し信じられない様子で一橋逸飛を睨みつけた。「この馬鹿者、あなた分かっているの...」

一橋逸飛はお婆様の平手打ちを避けながら、急いで説明した。「お婆様、久我羽の母親のしたことを見てください。もし本当に久我羽が嫁いできたら、私を何度裏切るか分かりませんよ。」

「もし久我羽が私を裏切ったら、私たち一橋家の名誉はどうなるんですか？」

彼は久我羽と結婚したくないが、久我羽の様子を見ていると、おとなしくしているタイプではない。浮気されるのは御免だった。

ちょうどこの機会に久我羽を振って、それから久我月を追いかければいい。

「それにお婆様、久我月は本当に優秀です。もし本当におじさんと結ばれたら、私たち大房には、もう希望はありません。」