栗本放治は十代の頃、その目標まであと一歩のところまで来ていた。
一橋貴明は当時のデルタ研究所が栗本放治に招待状を出したが、断られたことを覚えていた。
栗本放治は日本に忠誠を誓い、国立研究開発法人をデルタ研究所を超える存在にすることを誓った。
しかしその後、栗本放治はこの奇病にかかってしまった。
国は優秀な科学者を失い、全国の名医に栗本放治の治療を命じたが、結果は想像通りだった。
一橋貴明の別荘に着いた後、久我月は夕食を食べてから帰るつもりだった。
結局、甥がこんなに孝行なのに、夕食を共にしないのは申し訳ないと思ったからだ。
久我月が車から降りると、甥の表情があまり良くないことに気づいた。少し不気味な感じさえした。
ネット恋愛する前なら、久我月はストレートな女性で、きっとそれを無視していただろう。