第327章 女性を見下げるな

部下から中村楽の身のこなしについて聞かされ、彼女が軍靴を履いていたことも相まって、彼女が軍人であると確信を深めていった。

伊藤哲は冗談でしょうという表情を浮かべた。「……」

中村楽が芸能界から5年も姿を消していたとはいえ、誰も彼女のことを覚えていないはずがないだろう。

こんなに美しい女性なのだから、すぐに分かるはずだ。

伊藤哲は無意識に前の二人の大物を見やり、中村桑に対して言った。「中村法医はM国から戻ってきたんです。上からの書類で、法医を派遣するという指示がありました。」

中村楽は元々鈴木次郎様の元カノで、伊藤哲とも知り合いだったが、これは個人的な事なので、彼は言わなかった。

その上、後に中村楽はA市本部から派遣された法医であり、鈴木次郎様との関係もあって、伊藤哲は中村楽を非常に尊敬していた。

しかし伊藤哲は中村楽の以前の身のこなしがあまり良くなかったことを覚えていた。海外での数年間で、彼女には多くの物語があったようだ。

「それは相当な来歴ですね。」

中村桑は笑いながら頷き、意味深な目で伊藤哲を見て冗談めかして言った。「もしかしてM国のFBIから来たんじゃないですか?」

それは伊藤哲にも分からなかった。

中村桑は伊藤哲が黙っているのを見て、さらに言った。「もしそうなら、中村楽が斉田あきひろを見つける可能性は高いですね。」

伊藤哲はため息をついた。「見つかればいいんですが!」

どんな理由であれ、彼は中村楽に何かあってほしくなかった。

全員が車の中で一夜を過ごし、夜が明けると、小池紀之は前進を命じた。

車は断続的に400キロメートルを走り、日が暮れてきた。金砂川の端まであと200キロメートルの道のりが残っていた。

そして端に着いてからも、70キロメートルを徒歩で進まなければならない。計算すると、最短でも3日はかかる。

しかし砂漠の中心部に入らなければ、中村楽たちを見つける可能性はない。

2日間の移動で、鈴木月瑠は少しイライラし始めていた。普段は12時間の睡眠が必要な彼女だった。

しかし今は、3日間まともな睡眠を取れていない。目尻は充血し、目の下には赤い血管が目立っていた。

小池紀之は彼女の目の下の充血を見て、車のスピードを少し落とし、優しい口調で言った。「少し休憩しませんか?」

「いいえ。」

鈴木月瑠は目を細めた。