小池紀之はゆっくりと頷き、印刷した資料を伊藤哲に渡した。
伊藤哲は素早く目を通し、完全に衝撃を受けた。
大村つきまでもが謎の事件に関わっているとは???
小池紀之は当然、特殊部門のことは伊藤哲に話さなかったが、ただ大まかに、大村つきと大村鋭市の二人が、彼らが調査している事件に関係していることだけを伝えた。
一行は札幌市へと向かい、新千歳空港に着陸したのは、すでに夜の11時近くだった。
空港から警察署まで移動し、ちょうど深夜12時になった。
そして中村楽がバガン地域に入ってから、すでに12時間が経過していた。
中村桑は特殊部門の人々が来たのを見て、すぐに戦々恐々となった。「鈴木隊長、あなたが直接出向くということは...」
小池紀之は中村桑の言葉を遮った。「無駄話はやめて、さっさと仲間を連れてバガン地域で捜索を始めろ。」
中村桑:「...」
夜間は適切ではないだろう?
しかし、彼は何も言えなかった。
特殊部門はすべての部門の上に立つことは周知の事実で、東京本局と特殊部門が同時に事件を扱う場合でも、特殊部門が優先されるのだ。
そのとき、鈴木月瑠は目を伏せ、あくびをしながら言った。「疲れた。一眠りして、明朝から捜索を始めましょう。」
小池紀之はほとんど怒り死にそうだった。「何を邪魔してるんだ?」
突然、鈴木月瑠を連れてくるのは間違いだったと感じた。この死に損ないの女は寝ることしか考えていない。こんな時期に、まだ寝る気になれるのか?
しかし、もう来てしまったし、事件は彼女の親友にも関係している。
鈴木月瑠自身もかなり優秀で、小池紀之は今さら彼女を追い返すことができるだろうか?
鈴木月瑠は冷淡な目つきで小池紀之を一瞥し、低い声で言った。「バガン地域には孤狼の群れがいて、夜間に活動する習性がある。砂漠は通信状態が悪い。あなた一人で行けば?私たちはあなたの帰りを待っています。」
小池紀之:「...」
手伝いを頼んで来たのに、一人で死にに行けというのか?
「私の部屋を用意して。硬いベッドがいい。マットレスは眠れないから。」鈴木月瑠は呆然とする中村桑を見て、片方の肩にバッグを掛けて中に入っていった。
彼女はゆっくりと話したが、中村桑が鈴木月瑠の目を見た瞬間、強大な圧迫感を感じた。
それは中村桑に中村楽を思い出させた。