第331章 先に撤退したのか?

鈴木月瑠と小池紀之は何も言わず、同意なのか反対なのかもわからなかった。

鈴木月瑠が本拠地の方向に歩き出すのを見て、中村桑たちは急いで後を追った。

一行は30分ほど歩いて、西治呂の言った砂丘に辿り着いた。周囲は荒涼としており、特に変わった様子は見られなかった。

しばらくそこで待った後、鈴木月瑠はゆっくりと立ち上がり、冷たさを含んだ無関心な口調で言った。「もう待つ必要はない。中には誰もいないわ」

一同は「……」

小池紀之は無表情のまま、2秒ほど経ってから口を開いた。「私たちの存在に気付いて、先に撤退したということか?」

どの筋の者も警察とは関わりたくないものだ。おそらく中村楽の件で、彼らは撤退を決めたのだろう。

鈴木月瑠は伏せ目がちの瞳を細め、漆黒の瞳で、冷たい口調で言った。「中に入って確認する方法を考えましょう」

「しかし、地形に不慣れな我々には行動が制限されます」小池紀之は少し顔を傾け、目に深い寒気を宿した。

鈴木月瑠は目を細め、皮肉めいた笑みを浮かべた。「そんなに面倒なことはないわ。私たち二人が中に入って、彼らに応援を頼めばいい」

彼女は地下に誰もいないと推測しただけだった。もし誰かいれば、彼女と小池紀之で追い詰め、地上に追い出せば、伊藤哲たちが待ち伏せできる。

大村つきの事件は大村鋭市の事件とは別件で、伊藤哲が犯人を逮捕して事件を解決する必要があった。

小池紀之と鈴木月瑠が入ろうとした時、鈴木月瑠は素早く目を細め、小池紀之の腕を掴んだ。

彼を後ろに引っ張った。

その瞬間——

ドンという音とともに、砂丘の方が爆破された。そこで待機していた伊藤哲たちは素早く伏せ、その方向を見た。

武装した部隊が地上に現れ、懐中電灯でこの一帯を明るく照らし、銃を構えて爆破された入口に向かって入っていった。

20数人の部隊のうち5人が地上で待機し、その中央に背の高い男が立っていた。

来訪者を見て、鈴木月瑠の無表情な顔にほっとした表情が浮かび、その方向に歩み寄った。

5人の包囲網が開き、斉田あきひろはその中の一人を見て突然叫んだ。「鈴木次郎様付きの弓永行だ!」

伊藤哲も急いで見て、すぐに興奮した。「本当に弓永行だ!じゃあ...鈴木次郎様も来られたのか?」

「鈴木次郎様?」

中村桑は急いで尋ねた。「鈴木静海の鈴木次郎様か?」