そう言うと、また咳き込み、まるで心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓を吐き出しそうな勢いだった。
「本当に大丈夫だから...」彼は顔を横に向け、弱々しく鈴木月瑠を見つめた。その半開きの瞳は、どこか寂しげに見えた。
鈴木月瑠は一橋貴明が死にそうだと本気で思い、鈴木静海のことなど気にする余裕などなかった。「もういいから、軍医さんに包帯を替えてもらいましょう」
一橋貴明の目に笑みが浮かんだが、相変わらず弱々しく言った。「月瑠、怖がらないで。ただ喉が少し痛いだけだよ。咳き込んだら楽になるから」
彼は気取った様子で言った。「お兄さんに電話を返してあげなさい。電話に出ないと、心配して食事も眠れなくなってしまうよ」
竹内北:「......」
軍医:「......」
なるほど、竹内北が彼を入れさせなかった理由が分かった。
要するに、恋愛の邪魔をしているということか。
鈴木静海にとって自分より中村楽の方が大切だと知っている鈴木月瑠は、首を振って言った。「そんなことないわ。今は奥さんの世話で忙しいから、私が電話に出なくても気にしないはず」
一方、鈴木静海は月瑠が電話に出ないのを見て眉をひそめ、携帯に入り込んで人を殴りたい衝動を抑えながら、一連の音声メッセージを送った。
[何してるんだ?電話が繋がってるのに出ないってどういうことだ?どこのろくでなしと一緒にいるんだ?母さんに早恋してるって言いつけるぞ?]
[分かったよ。俺よりそいつの方が大事なんだな。分かったよ!]
鈴木月瑠の携帯が何度も振動したが、彼女は気にも留めなかった。
竹内北はタイミングを見計らって近づき、薬と包帯を鈴木月瑠に渡した。「鈴木お嬢さん、七男の若様の包帯を替えてあげませんか?」
鈴木月瑠は少し戸惑った様子で「女の子の私に包帯を替えさせるの?」
「......月瑠が不便だと感じるなら、自分でやるよ、ゴホゴホ......」そう言いながら、一橋貴明はまた演技がかった咳をした。
今度は鈴木月瑠も同情する気持ちはなくなり、包帯と薬をテーブルの上に置いた。「はい、あなたならできるはずよ」
一橋貴明:「???」
竹内北:「???」
「えっと...」