第388章 家宝

「本来なら鈴木月瑠が大人しくしていれば何も問題なかったのに、今になって鈴木敏が水性楊花だという話まで持ち出してきた」

「母親がこんな調子なら、娘だってろくな者にはなりませんよ」

彼は一気に多くを語り、鈴木月瑠のことを話し終えると今度は鈴木敏の悪口を言った。太夫人が鈴木敏の駆け落ちを快く思っていないことを知っていたからだ。

太夫人は冷笑した。「月瑠があなたたちに会いたがらないのも無理はないわ。年寄りが一日中噂話ばかりしているんだから」

一橋英史はその言葉を聞いて呆然とした。「お母様、これは...」

「月瑠がいなければ、私は今頃生きていないのよ」

太夫人は陰鬱な表情で一橋英史を見つめ、冷たい口調で言った。「彼女は一橋家の恩人よ。あなたに彼女の悪口を言う資格なんてないわ」