栗本放治の顔色が、完全に青ざめた。
栗本放治がこの新物質について言及するのを聞いて、鈴木月瑠はその真相を察した。
デルタには四つの一流研究所があり、その下にコンピューターなどの小規模な研究所が多数存在していた。
各研究所は、このような行動様式を取っていた。
自分のものにできないなら、破壊してしまえばいい。
栗本放治の顔は血の気が全く失せ、目は光を失ったように暗く沈んでいた。
当時の実験事故で奇跡的に生き残った栗本放治は、その後、一体どこに問題があったのかを調査していた。
理論上、当時彼らは特に優秀な科学者たちで、事故は完全に避けられるはずだったのに、なぜ事故が起きたのか?
そして、彼が目覚めた数日後には、新物質は既に完全に処理されており、後の調査では単なる事故という結論しか出なかった。
栗本放治は体を硬直させたまま立ち尽くし、頭脳はほとんど機能を停止していた。
しばらくして、青筋の浮いた手の甲を見下ろし、苦笑いを浮かべた:「そうか、これが当時の真相だったのか...」
栗本放治は国内で多くの研究成果を上げ、名門の出身で、国に貢献していたため、数々の栄誉を持っていた。
デルタ研究所が彼を招聘しようとしたが、栗本放治は断った。デルタは栗本放治を警戒し、破壊の心を抱いた。これは彼らの常套手段だった。
栗本放治は痛心して言った:「あの事故で、二十人の研究者が無一人生還せず、物理学界は大きな打撃を受けた...」
鈴木月瑠は何も言えなかった。
栗本放治たちはもっと早く気付くべきだった。デルタがそんなに善良な組織ではないことに。
「申し訳ありません。事故直後なら調査できたかもしれませんが、今となっては私にはお力になれません」鈴木月瑠は目を伏せた。
「構いません...」
栗本放治は苦々しく首を振り、鈴木月瑠を見つめながら、何か言いかけては止めた。
鈴木月瑠は眉をひそめた。
栗本放治の顔色が尋常ではなかったため、鈴木月瑠は急いで立ち上がり、栗本放治の肩を支えた:「まず落ち着いてください、そんな...」
言葉が終わらないうちに、栗本放治は突然気を失った。
「栗本さん?」
鈴木月瑠は栗本放治の頬を軽く叩き、反応がないので脈を取った。