第415章 一体何をしていたの?

栗本放治のまぶたが震え、ゆっくりと目を開けると、鈴木月瑠が目の前に立っているのが見えた。彼は無意識に口を開いた。「月瑠……」

「放治、私に治療させてほしいの?それともこの医者に任せたいの?」月瑠は江川みずきの方へ顎をちょっと上げた。

栗本放治:「……」

彼は状況がよく分からなかったが、江川みずきの方を見て、冷たい口調で言った。「出て行ってください」

それを聞いて、江川みずきの瞳が引き締まった。

彼女は栗本放治の治療を引き受けたものの、彼に会ったのは数回程度だった。

診察の時でさえ、栗本放治は彼女を完全に無視していた。

彼女は、それが栗本放治の冷淡な性格のせいだと思っていたが、彼が鈴木月瑠に対してこのような態度を見せるのを見て、理解した。

江川みずきが動かないのを見て、栗本放治は眉をしかめた。「まだ行かないのか?」

江川みずきの表情が一瞬こわばり、もはやそこにいる面目もなくなり、すぐに扉を開けて出て行った。

月瑠は栗本放治を見下ろし、目元の険しさが少し和らいだ。「こんなことで倒れるなんて、情けない!」

栗本放治は思わず苦笑した。「突然真実を知って、受け入れられなかったんだ」

月瑠は眉を少し上げ、無関心そうに尋ねた。「少し分からないんだけど、なぜあの時、そんなに簡単にデルタの人々を信じたの?」

栗本放治は目を伏せた。「実は、あの時の新型物質は、他の国にも提供されていた。でも事故が起きたのは日本だけだった」

月瑠は冷笑を浮かべ、冷たい口調で言った。「それはデルタのいつもの手口よ。あなただけじゃない」

「前世紀から、各国で科学者たちが実験事故で謎の死を遂げているわ」

ただ、実験には事故がつきものだから、誰も詳しく調査しなかった。

さらに、デルタは確実に全ての証拠を消し去り、調査しても何も見つからないようにしていたはずだ。

しかし、デルタは常に冷酷で徹底的だったのに、栗本放治が生き残るとは予想していなかったのだろう。

栗本放治は月瑠をじっと見つめ、しばらくしてから口角を歪めて笑った。「デルタ研究所のことをよく知っているんだね?」

「……まあね」

月瑠は目を細め、半分本気半分冗談で笑った。「もし復讐したいなら、前もって言ってね」

栗本放治は眉を上げた。「手伝ってくれるの?」