第475章 血を薬に入れる

「自分の意思でやることなら、いつだってかまわない」安池寒は小春沙耶を見ずに、深い静かな眼差しを向けた。

彼はそこに立ち、全てを掌握しているような威厳が漂っていた。

「私は反対よ!」

小春沙耶は考えることもなく冷たく反論し、先ほどの我慢は今や怒りに取って代わられていた。「中村楽だけが、鈴木静海を制御できるのよ」

「あなたが中村楽の解毒をするなら、鈴木静海は何も恐れることはなくなるわ」

鈴木静海の側で長年過ごしてきた小春沙耶は、彼の弱点を誰よりもよく知っていた。

中村楽だけが。

今、中村楽の生死が不明な中、鈴木静海は単身でここに闖入してきた。

そして、鈴木月瑠たちはまだ外にいる。彼らは皆実力者だ。ここを見つけ出さないとは限らない。

あるいは、鈴木静海と鈴木月瑠が内外で呼応し、今は安池寒が解薬を出すのを待っているのかもしれない。

だから、鈴木静海が倒れた時、小春沙耶は巡回を三倍に強化した。

一旦中村楽の毒が解けたら、鈴木月瑠たちはもう心配することはなくなる。ここを見つけるのは時間の問題だ。

安池寒のこの行動は、明らかに自分を危険にさらすことになる。

「あなたは誰よりもよく分かっているはず。解薬を渡したら、これまでの布石が全て無駄になるのよ!」小春沙耶は憤りを込めて彼を見つめた。

もし中村楽が解薬を手に入れたら、鈴木月瑠は必ず新しい解薬を作り出せるはずだ。

暗殺者連合の者たちはまだいる。早晩やって来るだろう。

しかし安池寒が、これらのことを知らないはずがない。

安池寒は低く笑った。「彼らをそう簡単には死なせたくない。そうでなければ、私がこれほど長年苦心して築き上げてきたものは、何のためだったというのか?」

「私が中村楽を死なせたくないと思えば、彼女は死ねない。私が鈴木静海を殺したいと思えば、彼は生きられない」

彼は笑いながら、振り返って小春沙耶を見た。その白く優美な顔は、今や悪魔のように人を戦慄させるものとなっていた。

その口調には、もはや異論を許さない意志が込められていた。

小春沙耶は冷静さを保てなかった。怒りと、そして嫉妬だった。

「今この状況で、あなたが鈴木静海を殺したいと思うだけでは、彼は死なないわ」彼女は感情を抑えきれず、声が大きくなった。