そのとき、馬場の入り口から話し声が聞こえ、数人が振り向いた。
鈴木月瑠たちがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
月瑠はダメージジーンズと白いシャツを着て、髪を結び上げており、首筋がより一層すらりとして美しく見えた。
彼女は左手にタピオカミルクティーを持って飲みながら、右手は一橋貴明に握られていた。首筋のキスマークは薄くなっていたが、よく見るとまだ確認できた。
遠藤音美は目が良く、二人が手を繋いでいるのを見た後、月瑠の首筋の消えかけたキスマークに気付いた。
彼女の目が一瞬曇ったが、すぐに一橋貴明の首筋に目が行った。彼の首筋の跡は明らかだった。
この光景を見て、遠藤音美の表情は言い表せないほど悪くなり、月瑠を飲み込んでしまいたいような気持ちになった。
「七兄さん、義姉さん」池田ふうたたちが二人に手を振って、とても親しげに挨拶した。遠藤音美に対する態度とは雲泥の差だった。